ひがのぼると読む「夢を紡ぐ」④
このシリーズは、ひがのぼるといっしょに「夢を紡ぐ」をもう一度、当時に想いを馳せながら読もうという企画です。
※「夢を紡ぐ」は、2002年4月から2004年9月に毎日新聞(京都/奈良版)に掲載された子ども館の実践報告を書籍化したもの
令和版 大地からの贈り物 ※今月は、館長のひがはるよが担当しました。
7月6日、子どもたちは加茂町内にある木津川に流れ込む支流で川の遊びをした。
私は子どもたちが川で精いっぱい自然に触れて遊んでいる間にお母さんと共にサンドイッチ作りに専念した。
先ず、全ての野菜を水で洗う。
子ども館の畑で採れた大きなおおきなジャガイモを湯がく、キュウリを細かく切る、トマトをスライスする。
畑から採れた野菜たちは新鮮でシャキシャキしている。卵もゆでる。
時間がたって冷めたころを見計らってジャガイモの皮をむく「あら、こんなにきれいに皮がむけるんですね?」とお母さん。
「これからはこの方法でやってみよう!」とジャガイモをマッシャーでつぶして大皿に盛る。
紅色のトマト、白色のポテト、黄色の卵、グリーンの胡瓜やリーフレタス、ハムと鮮やかな品々が並ぶ。
バイキング形式でパンにそれぞれのグザイを詰めていく子どもたち。無心に腹を満たす子どもたちをみていてホッとする。
うれしいひと時となった。
ひが はるよ
大地からの贈り物 2002年6月1日号
子ども館のフリースクールに通って来る子どもたちは、月曜日から金曜日までの週5日間、4月の入学以来今日までほとんど休まない。
朝は起きにくいようだが4月のころよりは、玄関での「おはよう!」の声も大きく晴れやかで明るい。
そんな子どもたちの関心の一つは畑の野菜たちだ。
私が作っている菜園に出かけて行っては片手に収まるほどのイチゴの葉をかき分けて採ってくる。赤らんでいるのは見えているところだけ。半分はクリーム色をしていても「甘くておいしい」と言って食べている。
隣の畑のイチゴには鳥に食べられないように網が掛けてある。それを見て自分で網を買って持って来た。大人の頭が入るくらいの網だった。苗を植えたばかりのキュウリを這わせるのに早速自分たちで杭と杭の間に取り付けた。
4月に子どもたちがまいたラディッシュが、ビー玉くらいに鮮やかな緋色になった。泥をきれいに洗うとピンポン玉くらいしかないタマネギを、絹さやと一緒にサラダにして食べている。
「冶代先生が作った子どものタマネギ、甘くておいしい!」
昼食で期せずして全員がパンの時、「今日の食事はバランスが良くないから、3時のおやつはサラダにします」などと自分たちで決めて作っている。
畑に食材を採りに行き、泥を落とし、包丁さばきもなかなかのものだ。隣近所の畑の方々から子どもたちにタマネギやイチゴなどのプレゼントをしてもらっている。
隣の畑からいただいたイチゴを入れたフルーツポンチができた時など、畑の方々や近所の人たちを交えてのおやつ会になる。「Sちゃん私に、声をかけてくれるんよ」と隣の畑のおばあさん。「来た時より明るくなって!」とわがことのように喜んでくれる。
子どもたちがまいたトウモロコシが芽を出している。大地からの贈り物に子どもたちの心が弾む。
ひが はるよ